神垣式認知機能リハビリとは4 まとめ

いかがでしたか。神垣式認知機能リハビリのコツは、嬉しい楽しい美味しい気持ちいい時間をどれだけ日常生活の中に取り入れるか、なのです。子供から大人まで脳が活発になるきっかけに大きな違いはありません。認知症予防のために、認知症の改善のために、生活の中に嬉しい楽しい美味しい気持ちいい時間を作りましょう。

 一方で、悲しく腹立たしく怖い気持ち悪い美味しくない時間も脳内のシナプスは活発になります。特に、お化け屋敷やホラー映画などの恐怖体験は脳にはとても刺激的です。怖いものを見たくなる欲求はそれ自身が楽しみの欲求なのです。しかし、悲しく辛い、悔しく腹立たしい、気持ち悪い体験が続くと、そのストレスが特定のホルモンを分泌させます。コルチゾールという副腎皮質から分泌されるホルモンで、別名「ストレスホルモン」とも呼ばれます。コルチゾールは過剰なストレスによって多量に分泌されるのですが、その反応はとても敏感で、更にこのホルモンが多量に分泌された際に、脳の海馬を萎縮させることがわかっています。

■ストレスとうつと認知症

アメリカ国立衛生研究所(NIMH)を中心とした共同研究(*1)が行われ、幼少時期の心的外傷体験の有無により大うつ病(*2)患者を2群に分けて海馬体積を比較した結果、体験有り群の左側海馬体積が有意に減少していることが実証され、幼少時期の心的外傷体験が海馬萎縮と密接な関係があり、これが大うつ病の発症しやすさにも関連する可能性が報告されています。
 一方、ストレス防御反応として作動する視床下部・下垂体・副腎(HPA 系)の異常がうつ病では高率に存在し、血中コルチゾール濃度が高いことが知られています。血中コルチゾール濃度と海馬萎縮に負の相関があることから、高濃度のコルチゾールが海馬神経を傷害することも明らかになりました。

 現代では年齢を問わず、家庭、学校、職場で強いストレスを受けて、うつになる人は珍しくありません。さて、読者の方は既に察しがついておられると思いますが、①強いストレス→②「ストレスホルモン」コルチゾール分泌→③脳の海馬萎縮→④認知症への進行という図式が明らかになっています。高齢になって認知症の症状が見られるのは年齢による認知症になりやすさからある程度は納得ができても、若い働き盛りの方の若年性認知症の多くはこのタイプではないかと思われます。もちろん、認知症の原因解明はまだ道半ばですので、それ以外の因子もありえるのですが、職場で強いストレスにさらされる事が頻繁に、あるいは長期間続いたとすれば、この可能性は高いと疑うべきでしょう。
 特に海馬は短期記憶を格納する部位ですので、就業中の「取引先との約束を忘れる」「重要な商談をすっぽかす」「受注商品の手配をせず損害を与えた」といった、働き盛りの方が若年性認知症で引き起こすトラブルはまさしく、海馬の萎縮による結果だと判断できます。

 当節のタイトルとは離れますが、この「ストレスホルモン」コルチゾールは年齢に関係なく分泌されます。もしも成長期の子供たちが教室内でいじめに遭い、長期間ストレスを受けていたら、海馬の成長は阻害され萎縮してしまいます。当然ですが、その境遇の子供たちの(脳の機能として)学習脳力に影響を与えてしまう事になります。その状態を放置する事が、子供の成長、子供の将来に影を落とす事は想像がつきます。


*伊藤勝昭ほか編集 『新獣医薬理学 第二版』 近代出版 2004年 ISBN 4874021018 山脇成人(2005年). page 8,9.
http://jams.med.or.jp/symposium/full/129006.pdf

(*1)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3230324/

(*2)
大うつ病とは?
「DSM-Ⅳ精神疾患の診断マニュアル」に基づいて判断されます。
更にDSM-Ⅳとは、アメリカ精神医学会が1994年に発表した、うつの診断基準第4版です。
 以下の9つの症状をもとに判断します。

 (1)抑うつ気分が、ほとんど毎日続く。
 (2)何事にも興味を持てず、また、楽しさも感じられず、無気力な状態である。
 (3)食欲が低下し、体重が大幅に減少した。
 (4)睡眠障害。(よく眠れない。夜中、何度も目が覚めてしまう。または、睡眠過多)
 (5)精神の焦燥、制止状態がみられる。
   焦燥 →落ち着きがなく、無意味な動作を繰り返す。
   制止 →動作がにぶくなる。身動きをしない。会話がうまくできず、声が小さくなる
 (6)疲れやすく、だるさがとれない。気力がわかない。
 (7)自分に価値を見出せない。自分を責めすぎてしまう。
 (8)集中力・思考力・決断力が低下してしまう。
 (9)死にたいと思ってしまう。自分は、この世にいない方がよい、と考えてしまう。

 以下の場合に、大うつ病である、と判断されます。
 (1)~(9)のうち、5つ以上があてはまること
 (1)、(2)は必ず含まれること
 それらの症状が、2週間以上続いて、苦痛を感じていることあるいは、生活に支障をきたしていること

 なお、大うつ病の「大」は英語のmajor(メジャー)を訳したものであり、症状が重い、という意味ではなく、「うつ病の中でも『主となる』タイプ」という意味です。


■ストレスとマイナスとネガティブを遠ざける

 誰もがそう思っているでしょう。悲しみや辛さや気持ち悪さを感じる時間をできるだけ排除し、喜びを感じる時間を生活に満たすことが、何よりも健康な人生につながるのです。ストレスの原因から距離をおき、ニコニコ笑える生活を築きましょう。笑う時間が脳を活き活きとさせるのです。


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